トレードを続けているとポジションサイジングという言葉を聞いたことがあると思います。ポジションサイジングは聖杯とも言われ資産を増やす魔法のように思われていますが、書籍などを読んでもピンとこない、腑に落ちない人が多いのではないでしょうか?
ポジションサイジングについて知らずにトレードしていたら遅かれ早かれ退場することになります。ポジションサイジングについて正しく理解して、退場しないようにリスク管理しましょう。
ポジションサイジングとは?
簡単に言えば、ポジションサイジングは負けた時に資金が減りにくく、勝つときには資金をより増やすためのポジション量の決め方といえます。
適正なポジションサイジングにすることで、資産を爆発的に増やすこともできます。
初心者はどのような手法でもポジションサイジングをすれば勝てると勘違いします。しかし、ポジションサイズが意味を持つのはエッジがある手法の場合だけです。つまり、エッジが無い手法、例えば単純なコイントスで資産が増え続けるわけではありません。
優位性(エッジ)が無い手法ではポジションサイズは機能しない
自分のトレード手法にエッジがあるかないかを調べるにはある程度まとまった数のトレード結果が必要になります。
あなたの手法に優位性(エッジ)はありますか?
手法に優位性があるかないかの判定はシンプルです。
自分のトレード結果において、R倍数の期待値がプラスならエッジがあります。R倍数の期待値がマイナスなら、エッジがありません。
R倍数とは何でしょうか?
R倍数とは、一回のトレードで取ったリスクに対するリワードとの比のことです。
利確ポイントと損切りポイントをトレード前に決めていたとします。
このケースでは利確ポイントがリワード、損切りポイントがリスクになります。
あるトレードのR倍数 = リワード(pips) / リスク(pips)
で計算できます。
R倍数を計算するときのリワードとリスクは金額でも構いませんが、Lotの影響を正規化するためpipsで統一します。
Pipsの例:リワード 10pips / リスク 50pips = R倍数 = 0.2
R倍数の期待値とは何でしょうか?
R倍数の期待値とは、ある程度のサンプル数のトレード結果から得られるR倍数の平均値です。つまり、一回当たりのトレードから期待できるR倍数といえます。R倍数の期待値がプラスであれば、トレードするたびにリターンを得られるのに対して、R倍数の期待値がマイナスではトレードをするたびに資産が減っていき、トレードを続けて行けばいつか必ず破産します。
初心者が相場から退場するのは、単純にR倍数の期待値がマイナスだからです。
なぜ、R倍数の期待値がマイナスになるのか?
買った時の利益よりも負けた時の損失が大きい、いわゆる利小損大のトレードとなるスキャルピングなどの手法では、高い勝率を維持しないと、R倍数の期待値はマイナスになります。
初心者は負けが続くと、負けを取り戻そうと利益確定が早くなります。利益が小さいのでレバレッジを上げたオーバートレードになり、利益が乗らず逆行して利確できない状況でも更に負けたくないので損失が大きくなるまで損切りできません。連敗するのが当たり前のトレードの世界では初心者は必然的に損小利大のトレードになりがちです。そういう背景から、初心者はR倍数がマイナスになるのです。この初心者の負けパタンのループは初心者が退場する真理を突いていると思います。
では上級者はどうでしょうか?
負けることは必然と理解していれば、連敗しても利益をシッカリ伸ばそうとしますから、上級者は勝つときに勝って利大を実現できます。買った時の利益よりも負けた時の損失が小さい、いわゆる損小利大のトレードを続けていれば勝率は低くてもR倍数の期待値がマイナスになりにくいです。
具体的な例でR倍数の期待値を理解しよう
リスクリワード比が2:1の場合で見てみましょう。
例えば、リスクが100pipsでリワードが50pipsだとリスクリワード比は2:1です。
損失 > 利益なので損大利生のトレードです。
勝率が80%の場合
R倍数の期待値 = (1 x 0.8 ) + ( -2 x 0.2 ) = 0.4
R倍数の期待値が0.4になりました。一回当たりのトレードで平均 0.4のR倍率ですから、投入したリスクの0.4倍がリターンとして得られることになります。トレードをすればするほど利益が積みあがることになります。
勝率が66%
R倍数の期待値 = (1 x 0.66 ) + ( -2 x 0.33 ) = 0
R倍数の期待値が0になりますから、トレードを続けてもトータルで資産は増えません。
トレード手法の統計データが重要
エッジのある手法かどうかの判定(R倍数の期待値>0)には、以下の3つのパラメータが必要です。
- 自分のトレードの勝率
- 総リスクpips数
- 総リワードpips数
総リスクは、全トレードが損切りになった時の総pips数
総リワードは、全トレードが利確になった時の総pips数
R倍率の期待値の計算式は以下になります。
R倍率の期待値 = (総リワード x 勝率) + ( 総リスク x (1-勝率))
ポジションサイジングを決める方法
ポジションサイジングとは破産しない状態で利益を極大化したいわけなのですが、もし、勝率が低かったら結構な頻度で連敗するわけです。
最大10連敗したという手法の場合、10回連続で負けたら資産のほとんどを失ってしまうとすればその後のトレードで取り返すのが大変になってしまいます。
総資産に対して一定の比率のリスクを取るようにポジションを取るのが一般的なポジションサイジングの考え方です。
連敗するということはトレードをするたびに資産が減りますが、その場合は取るリスクも減らさなければいけません。同じリスクでトレードしているとオーバーリスクになってしまいます。
つまり、総資産の何%を一回のトレードで失ってもよいかを決める方法です。
総資産が減れば、失うリスクも減少していきますので、連敗した時の資産の減少の速度は固定リスクと比べれば緩やかになります。一方で、連勝している時にはリワードが増えていきます。ポジションサイジングとはまずは破産しない、退場しないというのが第一です。
簡単に言うと、ポジションサイジングは複利運用なのです。
具体的なポジションサイジングの手法
ポジションサイジングは大きく2つの方法があります。それぞれについて記事を書きました。ポジションサイジングの計算式も説明しているので興味がある方は参照してください。
ポジションサイジングを学ぶ本
ポジションサイジングの本はラルフ・ビンスとタープ博士の本が有名で、日本語訳がパンローリングから出版されています。やや高価ですが、持っていて損はない本です。
まとめ
ポジションサイジングはリスク管理の最重要項目です。ポジションサイジングは資産に対する固定比率でポジションを増やしていく複利ですので利益は爆発的に増えます。その一方、連続で負けても損失が大きくなりにくい資金管理、リスク管理手法でもあります。ポジションサイジングは、退場しないために必要な技術です。